広告運用の内製化とは|メリット・デメリットと判断の基準、段階的な進め方と必要なツール

代理店に払っている手数料を見直したい、数字の動きを自分の目で追いたい。広告運用の内製化を考える理由はさまざまですが、「全部を自社でやる」か「任せ続ける」かの二択で考えると、判断を誤りやすくなります。実際、事業会社の担当者500人への調査では、すべてを内製化している会社は3割で、半数以上は一部だけを自社で担っています。どこまでを引き取るかを決めるところから、内製化は始まります。
広告運用の内製化とは|メリットとデメリット
内製化とは、代理店に任せていた運用を自社で担うこと。半数以上は「一部だけ」
広告運用の内製化(インハウス化)は、戦略・予算配分・入稿・入札の調整・レポートといった運用の仕事を、代理店などの外部ではなく自社の担当者が担う体制のことです。全部か無しかではなく、レポートは自社、入稿は代理店、のように仕事ごとに切り分けられます。富士フイルムビジネスイノベーションが2024年9月に行った調査(事業会社でWeb広告の運用に携わるマーケティング担当者500人)では、「全て内製化している」が30.0%、「一部のみ内製化している」が53.0%、「全く内製化していない」が12.6%でした。多数派は「一部だけ自社で持つ」形です。
メリットは費用・ノウハウ・速さ、デメリットは人と分析の難しさ
内製化のメリットは費用の削減・ノウハウの蓄積・運用の速さで、デメリットは人材の確保とデータ分析の難しさです。同じ調査で多かった回答は次のとおりです。
| 項目 | 多かった回答 |
|---|---|
| 内製化の理由 | 広告運用コストの削減 62.9%/社内にノウハウを蓄積 48.9%/運用スピードの向上 41.2% |
| 内製化した結果 | 全体的なコストが「かなり」「やや」削減された 計70.8% |
| 内製化の課題 | 専門知識を持つ人材の不足 58.6%/データ分析の難易度 41.2%/運用チームの構築に時間がかかった 36.4% |
費用は下がりやすい一方で、「あまり削減されていない」「全く削減されていない」も合わせて2割強ありました。見落とされがちなのは、課題の2位が「データ分析の難易度」である点です。代理店が毎月作っていたレポートと、その数字の読み解きが、そのまま自社の仕事になるからです。
内製化すべきかの判断基準と、段階的な進め方
判断の基準は、手数料と担当者の時間を同じ月額で比べること
内製化で浮くのは代理店の手数料で、手数料は広告費の20%前後で設定されることが多く、月の広告費が100万円なら月20万円前後です。この金額で担当者の時間と道具の費用をまかなえるかが、最初の判断基準になります。たとえば月の広告費30万円の事業会社なら手数料は月6万円前後で、担当者が月20時間を運用に割くと、時給換算で3,000円分の予算しかありません。広告費が小さいほど、浮く金額より担当者の負担が先に重くなります。逆に、管理画面を毎日見られる担当者がすでにいて、代理店のレポートを待つ数日が判断の遅れになっているなら、手数料以上の効果が出やすい状況です。なお「手数料が浮いた分だけ得をする」とは限りません。引き継ぎ直後は設定の意図がわからないまま触ってCPAが悪化することもあり、浮いた手数料を最初の数か月で取り返せない場合もあります。もう1つの基準は人で、専任でなくても週10時間ほどを運用に充てられる担当者がいるかを確かめます。他の業務の「空いた時間で」任せる形は、日々の入札調整もレポートも回らなくなる典型です。
一度に引き取らず、計測からレポート、日々の運用、予算配分の順に移す
段階的に移すときは、数字を正しく取る仕事から始め、判断の重い仕事を最後にします。
- 広告アカウントとタグの管理者権限を自社に移す(代理店名義のアカウントや、代理店しか持たない権限は、契約が終わると引き継げない場合がある)
- レポートを自社で作り、代理店のレポートと数字を突き合わせる
- 入稿・入札の調整など、日々の運用を引き取る
- 予算配分と戦略を引き取る
1つ目では、引き継いだタグが二重に発火していないかもあわせて確かめます(コンバージョン計測の確認手順)。2つ目の期間は、代理店のレポートが答え合わせの相手になり、媒体ごとの数字の定義のずれにもここで気づけます。レポートの型から作るなら広告レポートのテンプレートの作り方が出発点になります。引き取った媒体ごとに、うまくいかなかったときに戻す基準も先に決めておきます。たとえば移行後3か月のCPAとCV数を代理店運用期の直近6か月平均と比べ、CPAが2〜3割悪化したまま戻らなければ、その媒体は代理店やフリーランスへ戻す、という形です。媒体単位で行き来できるようにしておけば、うまくいかなかったときの損失も小さく済みます。
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内製化したあとにそろえるツール
計測・集計・レポート・保管の4層で、足りない層だけ埋める
内製化で用意するものは、計測・集計・レポート・保管の4層に分けると、自分に足りないのは1層か2層だけだとわかることがほとんどです。代理店に任せていたあいだ、この4層は見えないところで誰かが担っていました。
| 層 | やること | 無料で足りる範囲 | 有料に移る合図 |
|---|---|---|---|
| 計測 | CVを媒体へ返す | 媒体タグとGA4、タグマネージャー | 電話・実店舗など計測外の経路が売上の柱になったとき |
| 集計 | 媒体をまたいで並べる | 書き出したCSVとスプレッドシート | 媒体が3つを超えたとき、または毎週数字を見たくなったとき |
| レポート | 人に見せる形にする | スプレッドシートのグラフ、無料のBI | 社外へ出す、または見る人が3人を超えたとき |
| 保管 | 過去の数字を残す | 媒体の管理画面(保持期間の範囲内) | 前年同月比を見る必要が出たとき |
4層のうち、内製化1年目に抜けやすいのが保管です。連携ツールを入れても取得できるのは媒体が保持している範囲までなので、初月から数字を自分の側へ書き出し続けておきます。
月30万円・1〜2媒体なら管理画面とスプレッドシート、3媒体以上で集計を人手から外す
月30万円を1〜2媒体で回す規模なら、集計の層に道具を入れる必要はまだありません。CSVを月に2回書き出す程度なら30分ほどで、Google広告だけならスプレッドシートへの自動出力も無料で組めます。優先すべきは計測の層で、計測が正しくないまま集計を整えても、精度の低い数字がきれいに並ぶだけです。月100万円規模で媒体が3つ以上になると、作業時間そのものより写し間違いの検算に時間を取られ始めます。そこが集計を人手から外す合図です。社外のクライアントへ出すなら、レポートの層に前月比とその理由を添える欄が要りますが、道具は層ごとに1つを目安に増やしすぎないほうが管理が続きます。ADmini(アドミニ)は媒体連携で取り込んだ数字を列をそろえて同じ表へ並べるため、集計用とレポート用のシートを別に持たずに済みます。無料で使えるデータソースは3件までなので、媒体が3つを超えた時点が、集計の層で有料を検討する境界とおおむね重なります。ただし、道具を入れても媒体ごとの定義をそろえる判断は残ります。集計の層にBigQueryのようなデータ倉庫を入れるのは、行数が数百万を超える、数年分を横断して見る、SQLで自由に分析したい、の3つがそろってからで足ります。それまでは、データを入れて整える準備と保守の手間が、得られる速さを上回りやすいからです。

まとめ
広告運用の内製化は、代理店に任せていた運用を自社で担うことで、調査では半数以上が一部だけを自社で持つ形でした。判断の基準は浮く手数料と担当者の時間の比較で、移すときは計測からレポート、日々の運用、予算配分の順に引き取ります。内製化したあとの道具は、計測・集計・レポート・保管の4層のうち、足りない層だけを埋めます。
よくある失敗の形は決まっています。内製化を決めた勢いでレポートの層から入り、見栄えのよいダッシュボードを組んだものの、計測が直っていないので数字が合わず、3か月後には誰も開かなくなる。ADmini(アドミニ)は集計とレポートの層を1つにまとめますが、計測の層までは肩代わりしません。まず今週やることは、いま代理店が担っている仕事を「計測・レポート・日々の運用・予算配分」の4つに分けて書き出し、最初に引き取る1つを決めることです。
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よくある質問
広告運用の内製化とは何ですか?
戦略・予算配分・入稿・入札の調整・レポートといった広告運用の仕事を、代理店などの外部ではなく自社の担当者が担う体制のことです。インハウス化とも呼ばれます。全部を自社で持つ必要はなく、レポートは自社、入稿は代理店のように仕事ごとに切り分けられます。2024年9月の調査(事業会社の担当者500人)では、全て内製化が30.0%、一部のみ内製化が53.0%でした。
広告運用を内製化するメリットとデメリットは何ですか?
メリットは代理店の手数料の削減、社内へのノウハウの蓄積、判断と修正の速さです。デメリットは専門知識を持つ人材の確保とデータ分析の難しさで、同じ調査では課題として「人材の不足」58.6%、「データ分析の難易度」41.2%が上位でした。引き継ぎ直後は設定の意図がわからずCPAが悪化することもあります。
内製化すべきかはどう判断すればいいですか?
浮く手数料と担当者の時間を同じ月額で比べます。手数料は広告費の20%前後のことが多く、月の広告費30万円なら月6万円前後です。担当者が月20時間を割くなら時給換算3,000円分の予算しかなく、広告費が小さいほど負担が先に重くなります。毎日管理画面を見られる担当者がいて、レポート待ちが判断の遅れになっているなら効果が出やすい状況です。
内製化はどの順番で進めればいいですか?
数字を正しく取る仕事から始め、判断の重い仕事を最後にします。広告アカウントとタグの管理者権限を自社に移す、レポートを自社で作って代理店のレポートと突き合わせる、入稿・入札の日々の運用を引き取る、予算配分と戦略を引き取る、の順です。代理店名義のアカウントは契約終了後に引き継げない場合があるため、権限の確認を最初に行います。
