広告のVTRとは|「最後まで見られた率」ではない理由と、完全視聴率との使い分け

「動画広告のVTRが55%なので、半分以上の人が最後まで見ています」。レポートにこう書いたことはないでしょうか。数字は管理画面のとおりでも、この説明はたいてい正しくありません。VTRが数えている「視聴」は、最後まで見たことを意味しないからです。広告運用者の方からは、動画の指標だけ媒体ごとに話が噛み合わない、という相談をよく受けます。噛み合わない原因は、分子と分母の条件がフォーマットごとに動くところにあります。この記事では、VTRの定義と、完全視聴率との使い分け、媒体をまたいで並べる前の確認点をまとめます。
VTRが数えているのは「視聴」であって「完了」ではない
VTRの計算式は「視聴回数 ÷ 広告の表示回数」
VTR(View Through Rate)は、広告が表示された回数のうち、媒体が視聴されたと判定した回数の割合です。Google広告のヘルプはTrueView視聴率を「視聴回数 ÷ インプレッション」と定義しています。同じヘルプはこの指標を「TrueView 視聴率(旧称「視聴完了率(VTR)」)」と表記しており、かつて完了率の名で呼ばれていたことが、いまの読み違えの出どころになっています。同じヘルプはこの指標を「TrueView 視聴率(旧称「視聴完了率(VTR)」)」と表記しており、かつて完了率の名で呼ばれていたことが、いまの読み違えの出どころになっています。分子に入るのは再生が完了した回数ではなく、媒体が定めた条件を満たした再生の回数です。分子の条件を確認しないかぎり、VTRが何の割合なのかは決まりません。名前が「率」であること自体が、完了率だという読み違えを呼び込みます。
「視聴」と数える条件はフォーマットで変わる
同じYouTube広告でも、視聴と数える条件はフォーマットごとに違います。Google広告ヘルプの記載を並べると、次のようになります。
| フォーマット | 「視聴」と数える条件 |
|---|---|
| スキップ可能なインストリーム | 30秒の視聴(30秒未満の広告は最後まで)、またはクリック等の操作 |
| YouTubeショート | 10秒の視聴(10秒未満の広告は最後まで)、またはボタンのクリック |
| インフィード動画 | サムネイルをクリックして動画再生ページへ移動、またはインラインで自動再生される動画を10秒以上視聴 |
| バンパー・スキップ不可インストリーム | TrueViewの視聴回数としてはカウントされない |
Meta広告には「VTR」という名前の列がありません。近い位置にあるのはThruPlay(15秒以上の再生。15秒以下の動画は最後まで再生された回数)で、率で見たい場合は自分で割り算をすることになります。Googleの30秒とMetaの15秒を、同じ「視聴」として横に並べることはできません。同じ数え方の違いが単価側に出ると、視聴単価の比較も成立しなくなります。
完全視聴率と混ぜると、判断が逆向きになる
VTRと完全視聴率は分子が違う
完全視聴率は、最後まで再生された回数を分子に取る別の指標です。媒体の管理画面には再生の到達率を示す列(25%・50%・75%・100%)が用意されていて、100%の列から出るのがこちらにあたります。VTRの分子は媒体が決めた秒数に届いた回数なので、両者が一致することはまずありません。VTRが高く完全視聴率が低い動画は、入口は通っているのに後半で離脱している状態で、素材を短く詰める判断につながります。反対にVTRが低く完全視聴率が高ければ、届いた人には効いているのに入口で弾かれていることになり、手を入れる場所は冒頭のカットになります。2つを混ぜたまま議論すると、打ち手の向きが逆になります。
同じ素材・同じ露出でも、数え方を変えると数字が動く
同じ動画を同じ回数だけ表示しても、数え方を変えるだけで並ぶ数字は30%・55%・12%に分かれます。再現用のサンプルデータで確かめます。45秒の商品紹介動画を、表示回数10,000回ぶん配信したとしましょう。30秒まで届いたのが3,000回、10秒まで届いたのが5,500回、最後まで届いたのが1,200回だったとします。
- スキップ可能なインストリームのVTR:3,000 ÷ 10,000 = 30%
- YouTubeショートのVTR:5,500 ÷ 10,000 = 55%
- 完全視聴率:1,200 ÷ 10,000 = 12%

素材も露出量もひとつなのに、並ぶ数字は30%・55%・12%になります。この中から「VTR 55%」だけを抜き出してレポートに書けば、実際には12%しか最後まで届いていない動画が、好調な素材として翌月の予算を持っていきます。指標名が同じでも中身が違うという問題は動画に限らないため、媒体をまたいで数字を合算する前の確認点は広告指標の一覧と計算式にまとめています。
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媒体をまたいでVTRを並べる前に確認すること
分母が「表示回数」か「再生開始数」かを見分ける
最初に確認するのは分母です。Google広告のTrueView視聴率はインプレッションを分母に取りますが、媒体や集計ツールによっては再生が始まった回数を分母に置く定義もあります。再生開始数はインプレッションより小さくなるため、同じ動画でも率は高く出ます。分母の違う率どうしは、差が大きいほど比較の役に立ちません。ただし、分母を揃えれば媒体間の比較が成立するわけでもありません。揃うのは計算の形だけで、視聴と判定する秒数と、そもそもの配信面の性質は残ったままです。媒体横断で見るなら、VTRは順位づけではなくリーチの数え方と同じく、同一媒体内の時系列変化として扱うほうが安全です。
VTRが落ちたときに見る順番
VTRが落ちたときは、分子と分母のどちらが動いたかを先に切り分けます。順番は、①配信フォーマットの構成比(ショートの比率が下がればVTRは下がる)、②表示回数だけが伸びていないか(リーチ拡大の局面では分母が先に増える)、③素材の冒頭を差し替えていないか、の3つです。①と②で説明がつく場合、素材には手を入れません。縦型とインストリームを同時に回している場合はこの切り分けが特に効くので、配信面の構成の違いは縦型ショート動画広告の使い分けで整理しています。

この切り分けは、フォーマット別の数字を同じ画面に並べておかないと手間がかかります。ADmini(アドミニ)のピボット集計なら、書き出したファイルの列をそのまま行と列に組み替えられるので、月初に構成比の変化から確認できます。
まとめ
VTRは「最後まで見られた率」ではなく、媒体が定めた条件を満たした再生の割合です。条件は30秒・10秒・サムネイルのクリックとフォーマットごとに動き、Metaには同名の列すらありません。だからこの指標は、媒体をまたいだ優劣づけには向かず、同じ媒体・同じフォーマットの中で前月と比べるときに力を発揮します。先に言っておくと、ツールにできないことが2つあります。1つは、媒体が違う判定基準をそろえること。もう1つは、その動画をもう15秒短くするかどうかを決めることです。ADmini(アドミニ)ができるのは、定義の違う数字を同じ画面に並べて変化に気づきやすくするところまでです。まず今週やることは、直近1か月のレポートでVTRと完全視聴率を並べ、2つの差が最も大きい素材を1本見つけることです。その1本の冒頭5秒が、次に手を入れる場所です。
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よくある質問
VTRと完全視聴率はどちらを見ればいいですか?
入口の反応を見たいときはVTR、最後まで届いているかを見たいときは完全視聴率です。VTRは媒体が定めた秒数(YouTubeのスキップ可能なインストリームなら30秒、ショートなら10秒)に届いた回数の割合で、完全視聴率は最後まで再生された回数の割合です。素材の冒頭を直すか、尺そのものを詰めるかの判断が変わるため、片方だけを見て決めないほうが安全です。
VTRの目安は何%ですか?
媒体とフォーマットで基準が変わるため、横断で使える目安の数字はありません。同じ動画でも、30秒を視聴と数えるインストリームと10秒で数えるショートでは率が大きく変わります。目安を持ちたい場合は、他社の平均値ではなく、自分のアカウントの同一フォーマット・同一配信面での過去3か月の中央値を基準にしてください。
Meta広告のVTRはどこで見られますか?
Meta広告の管理画面に「VTR」という名前の列はありません。近い指標はThruPlayで、15秒以上再生された回数(15秒以下の動画は最後まで再生された回数)を示します。率で見たい場合は、ThruPlayをインプレッションで割って自分で計算することになります。この計算値をGoogleのTrueView視聴率と並べても、視聴と判定する秒数が違うため優劣の比較にはなりません。
VTRが下がったら素材を差し替えるべきですか?
差し替える前に、配信フォーマットの構成比と表示回数の増減を確認してください。ショート配信の比率が下がったときや、リーチ拡大で表示回数だけが先に増えたときにも、素材を変えていないのにVTRは下がります。この2つで説明がつかず、かつ完全視聴率も同時に落ちている場合に、冒頭の差し替えを検討する順番になります。
