広告データを媒体の中に置いたままでいいのか|日次データが消える前に手元へ残す、長期蓄積の考え方

広告データはその月のレポートを作ったら役目が終わる。古い数字を抱えておく意味がわからない。広告運用者の方から、こうした話をよく聞きます。実際、単月のCPAとROASを追うだけなら過去データはほとんど要りません。ところが2026年6月、Google広告がレポートデータの保持ポリシーを変更し、日次・週次のデータを一定期間で切ることになりました。捨てる捨てない以前に、放っておけば消えるものが出てきたわけです。媒体の中のデータにはどんな期限があるのか。長期のデータがないと何ができないのか。手元に残すと決めたら何を決めておけばよいのか。この3つを順に押さえます。
媒体の中に置いたデータには期限がある
Google広告は2026年6月から、日次・週次のデータを37か月で区切った
Google広告のデータ保持ポリシーによれば、2026年6月1日以降、1か月未満の期間で収集された時間別・日別・週別のレポートデータが利用できるのは37か月間です。それを過ぎると、管理画面からもAPIからも取り出せなくなります。削除されるのではなく、アクセスできなくなるという言い方が正確ですが、運用者にとっては同じことです。
一方で、月別・四半期別・年別のデータは11年間利用できます。リーチとフリークエンシーの指標は3年間です。つまり期限は一律ではなく、細かい粒度ほど早く手が届かなくなる設計になっています。
| データの粒度 | 利用できる期間 | この粒度でしかできないこと |
|---|---|---|
| 時間別・日別・週別 | 37か月 | 曜日・時間帯の傾向、クリエイティブの週次の減衰 |
| 月別・四半期別・年別 | 11年 | 年単位の伸長、季節の山谷の把握 |
| リーチ・フリークエンシー | 3年 | 接触回数と成果の関係の検証 |
粒度を落とせば長く残るが、落とすと戻せない
月別なら11年残るのだから、月次で見ておけばよいのではないか。そう考えたくなりますが、ここに落とし穴があります。日次から月次は作れても、月次から日次には戻せません。月の合計CPAが目標内に収まっていても、その月の前半で大きく外して後半で取り返していたのか、ずっと安定していたのかは、月次の数字からは復元できないわけです。
媒体ごとに期限の考え方も違います。LINEヤフー広告のように、データの有効期間と蓄積についてヘルプで別途定めている媒体もあります。複数媒体を回しているなら、期限は媒体の数だけ存在すると考えたほうが実態に近い。「どの媒体のデータがいつまで見られるか」を把握していないまま運用している状態は、珍しくありません。

長期のデータがなければできない判断
施策の効果と季節の効果を切り分ける
過去データがいちばん効くのは、自分の打ち手が効いたのかどうかを判定する場面です。「入札を変えたらCPAが10%改善した」という結果が出たとして、それが施策の効果なのか、毎年この時期に起きることなのかは、単月では判別できません。前年の同じ月に同じ動きがあったなら、施策は関係なかった可能性が高い。
業種によっては、この差がかなり大きく出ます。年末に向けてROASが自然に上がる商材で12月に施策を打てば、何をしても成功したように見えます。逆に、夏に落ちる商材で7月に改善施策を入れると、数字は下がったまま動かず、効いていない施策だと誤判定してしまう。季節の形を知らないと、施策の評価はどちらの方向にも狂います。
ただし、季節性の把握には最低でも複数年分が要ります。1年分では「去年もそうだった」までしか言えず、それが毎年の傾向なのか単発の出来事だったのかは決まりません。手元に残し始めた初年度は、この分析はまだできないと考えておくのが正直なところです。
それでも前年比較をやるなら、比べる相手の条件を揃えておく必要があります。前年の同じ月に大型のセールを打っていた、あるいは予算が今年の半分だった。この状態で数字だけを並べても、出てくるのは季節性ではなく施策の差です。前年比較が意味を持つのは、予算規模と配信の構成がある程度そろっている期間どうしを比べたときだけ。「前年同月比」という言葉は、条件が同じであることを保証しません。日次データと一緒に、その月に何をしたかのメモを残しておくと、後から条件をそろえた比較ができます。
クリエイティブが何週で落ちるかを知る
同じクリエイティブを配信し続けるとCTRが下がっていく現象は、週単位の数字を並べて初めて形が見えます。1週間ごとに数%ずつ落ちていく変化は、月次の合計では平均に飲まれて消えるからです。
複数のクリエイティブについて配信開始からの週次推移を並べると、「このアカウントでは配信4週目あたりからCTRが落ち始める」といった自分の商材固有の傾向が出てきます。そこまで分かれば、差し替えを勘ではなく予定として組めます。制作を外注しているなら、発注のリードタイムから逆算する根拠にもなります。
とはいえ、減衰の速さは季節・競合の出稿量・配信面の変更でも動きます。複数媒体を一元管理して全体最適で判断する考え方と同じで、1つの数字だけを見て原因を断定しないほうが安全です。

手元に残すと決めたら、先に決めておく3つのこと
何を、どの粒度で残すか
全部残そうとすると続きません。最初に決めるのは粒度です。上で見たとおり、期限が先に来るのは日次・週次なので、残す価値が高いのは日次の粒度です。月次は媒体側に長く残るぶん、優先度は下がります。
- 日付、媒体名、キャンペーン名
- 費用、インプレッション、クリック、コンバージョン
- 必要ならデバイス、広告グループ名
この程度から始めれば、CPA・CTR・CVR・ROASは後から計算で出せます。計算できる指標を列として持たない、というのが列を増やしすぎないコツです。
複数媒体を残すなら、もう一つ決めておくことがあります。列名の統一です。媒体によって費用の列は「費用」だったり「消化金額」だったり、コンバージョンは「コンバージョン数」だったり「成果数」だったりします。書き出した時点の名前のまま貯めていくと、1年後に横へ並べる段になって手が止まります。最初に自分の呼び方を1つ決めて、取り込むときに揃える。この一手間を先にやっておくかどうかで、蓄積したデータが後で使えるかが決まります。
どこに置き、誰が更新するか
置き場所そのものはスプレッドシートでもかまいません。問題になるのは更新です。手で書き出す運用は、繁忙期に必ず止まります。止まった月が虫食いのように空くと、前年比較の土台としては使えなくなる。記録は、抜けた瞬間に価値が大きく下がります。
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まとめ
広告データを長期で持つ意味は、資産という言葉で語られがちですが、実際にできることはもっと具体的です。施策の効果と季節の効果を切り分けること、クリエイティブが落ちる速さを知ること。この2つは長期の日次データがなければ成立しません。そして日次データは、媒体の中に置いたままでは37か月で手が届かなくなります。
まず今週やること:Google広告の管理画面で、日次データを何か月前まで表示できるかを確認する。37か月より前が出てこないなら、そこが今の自分の記憶の限界です。その範囲を把握したうえで、手元に残し始めるかどうかを決めてください。
ツールにできないことを先に言っておくと、ADmini(アドミニ)を含めて、集計ツールは過ぎ去った期間のデータを取り戻してはくれません。今日から先の記録を途切れさせないことしかできない道具です。逆に言えば、始めた日から先の分は確実に残ります。判断のためにどの数字を見るかを決めるのは人の仕事のままですが、その数字が手元にあるかどうかは、今日決められます。
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よくある質問
Google広告の過去データはいつまで見られますか?
データ保持ポリシーにより、2026年6月1日以降、1か月未満の期間で収集された時間別・日別・週別のレポートデータは37か月間利用できます。月別・四半期別・年別のデータは11年間、リーチとフリークエンシーの指標は3年間です。37か月を過ぎた日次データは管理画面からもAPIからも取り出せなくなります。
月次で残しておけば十分ではないですか?
用途によります。年単位の伸長や季節の山谷を見るだけなら月次で足りますが、日次から月次は作れても月次から日次には戻せません。曜日・時間帯の傾向やクリエイティブの週次の減衰は日次の粒度がなければ復元できないため、これらを見る予定があるなら日次で残す必要があります。
広告データを長期蓄積すると、具体的に何ができるようになりますか?
主に2つです。1つは、施策の効果と季節の効果を切り分けること。前年同月と比べることで、改善が打ち手によるものか毎年の傾向かを判別できます。もう1つは、クリエイティブの減衰速度の把握です。配信開始からの週次推移を並べると、自分の商材で何週目から落ち始めるかが見え、差し替えを予定として組めます。
何をどこまで残せばよいですか?
最初は日付・媒体名・キャンペーン名・費用・インプレッション・クリック・コンバージョンの範囲で足ります。CPA・CTR・CVR・ROASは後から計算で出せるため、列として持つ必要はありません。列を増やすほど更新が続かなくなるので、絞って始めたほうが記録が途切れません。

